2024.06.10ブログ
システムコーチングを通して見えてくる視座(担当:石神)
日曜日の朝、真っ黒に日焼けしたある登山家の笑顔がテレビに映り出されていました。
「山頂から見るこの景色が好きなんです。」眼下に広がる山々を眺めながら、「ここに立っていると、嫌なことは全部忘れてしまいます。」と屈託のない笑顔で話す姿は印象的でした。
わたしはハイキングコースとして、伊勢原の「塔の山」や八王子の高尾山くらいしか登った経験はありません。それもかなり昔のことです。山頂を目指して登っている自分の姿を思い出してみました。山頂に辿り着けば清々しい気分になれるのでしょうが、その途中の山道は青息吐息で、目の前の険しく細い道しか目に入らず、時折振り返り、辿って来た山道を満足げに眺めている自分、それが力の源になり、ヤットコサで山頂に辿り着いたことが鮮明に思い出されました。
日本語には、「視点」、「視界」、「視野」、「視座」という言葉があります。
それぞれ、言葉の意味する違いについて、調べてみると、「視点」は物事のどの部分を見ているか、あるいはどのように捉えているかに焦点が当たり、「視野」は物事のどれだけの範囲が見えているかということになると記されていました。また「視野」と「視界」の違いについては、固定した状態で、ただ一方のみを見続けている状態が「視野」で、「視界」は360度見渡すことのできる世界のことで、私たちが意識すれば見ることができる範囲のことと説明されていました。
一人ひとりが見ている世界が違うのは致し方ないですが、運命共同体とも言われる組織の中で所属するメンバーの仕事に対する見方や捉え方などが異なることで、職場の成果や生産性にマイナスの影響が出てしまうのは、避けたいものです。
「視座」は物事を認識する時の立ち位置です。「 視座」はどういう高さの立場から物事を見ているかということが大きく影響しています。「視座」が低くなると、次元の低い立場でしか物事を捉えられないことに成り兼ねません。またその結果、「視点」「視野」が狭くなることにつながり、物事の本質を見極めることが困難になってしまいます。
システムコーチングでは、お互いの関係性の質を高めることを重要視しています。関係性が整ってくるにしたがって、お互いの見ている視点、視野がかなり明らかになってきます。それにともなってお互いの思考の質が高まっていくわけですが、この思考の質の高まりの背景には、もう一つ重要な点があるように思います。メンバー個々人が語る意見やその内容より、そのことについてメンバ―が抱いている気持ちや感情により焦点を当てているからだと感じています。
メンバーが車座になって気持ちを伝えたり、様々なワークを通じての気づきを語っていく過程で、このメンバーの関係性の質の高まり、仕事や職場を捉える「視界」の広がりをもたらして行きます。そしてメンバー同士の「視界」の広がりが「視座」の高まりへ移行していきます。
ある経済学者が、この混沌とした時代のリーダーは「見究める力、見通す力」が必要だと語っていました。「言うは易し、行うは難し」の世界ではありますが、このメンバー同士の「視座」が高まることによって、「見究める力、見通す力」、この眼力を養えることに、繋がるんだろうと感じます。
どんな立場で物事を見るのか、どんな位置で見るかによって、物事を捉える次元(世界)が異なってきます。その「視座」をメンバー同士がより高い次元で共感、共有できれば、組織の運営に新たな視界が開かれると確信しています。
システムはまさに生きた関係の質の高まりによって、多様な世界を生き抜いていくのだと思います。
山の頂きに立ち、山々を眺めている屈託のない笑顔の登山家から、時には山の頂きから見てみる自分を忘れてはいけないなぁ~と感じた日曜日の朝でした。
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